夜、パソコンの前で動画をアップしながら、私は最近話題になっていた一冊の本を読んでいた。<br> 本の題名は出さないが女性同士の物語だ。<br><br>「欲望」と「消費」。<br>その言葉が、やけに胸に残った。<br><br>私の仕事は、女性の卑猥な動画を編集して投稿することだ。<br>「これ、伸びるから優先な」<br>「感情はいらない。数字だけ見ろ」<br><br>おじさんは、いつもそう言っていたことを思いだす。<br>最初は、その偉そうで冷たくて、人を道具みたいに扱う態度が嫌いだった。<br>顔を見るだけで、胸の奥がざらついた。<br><br>それなのに、いつの間にか私は、<br>その人の一言で一喜一憂するようになっていた。<br><br>褒められれば安心して、<br>無視されれば眠れなくなる。<br><br>気づけば、画面の向こうの女性たちを、「素材」や「商品」としか見なくなっていた。<br><br>その本の中では、女たちは堂々と食べ、欲し、選び、生きていた。自分の人生を、自分のものとして抱きしめていた。<br><br>なのに私は、<br>誰かの欲望を並べて、<br>誰かの評価を食べて生きている。<br><br>ページを閉じて、画面を見る。<br>顔のいい女。<br>体のいい女。<br>セフレによさそうな女。<br>嫁にしたそうな女。<br>結局、<br>男たちに無茶苦茶にされ、<br>数字に変えられる人生。<br><br>そして、それを淡々と押す私の指。<br>いつからだろう。<br>私は、おじさんみたいになりたいと思うようになっていた。<br><br>強くて、冷たくて、<br>何も感じない人間に。<br><br>そうなれたら、この仕事も、この毎日も、<br>きっと楽になると思っていたのか。<br><br>でも、本を読み終えた今、<br>その考えが、少しだけ怖くなった。<br><br>私はまだ、ここにいるし、パソコン画面の前で迷いながら、<br>それでも指を止められずにいる。<br><br>それでも、「おかしい」と思えている自分が、<br> まだ残っていることだけが、<br> 小さな救いです。
とある男の秘録集17
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- 番号
- tchb-060
- 番号前缀
- TCHB
- 发行日期
- 2026-03-04
- 系列
- とある男
- 片商
- Teacher / Mousouzoku
- 厂牌
- 暗黒






